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初めての熊本研修②(イ草苗の株分け&畳表製織見学編)
イ草の植え付けを体験を終えて、次は別の農家さんを訪問します。
最初に伺ったのは草野雄二さんのお宅です。
草野さんの畳表は今まで何度も使わせていた事がありますが、お会いするのは初めて。
私と同世代の後継者の息子さんもおり、ご家族みんなでイ草作りをされているとのことで茨城から来たとお伝えすると皆さん快く迎えてくださいました。
今回は植え付けするイ草の苗の株分けをしているところを見学させていただきました。
苗床で育てた苗を掘り起こし
専用の機械で株分けをしていきます。
日差しが入らないように暗い作業場の中で奥様が一人黙々と機械を操作していました。
カットして数本ずつに株分けした苗は後日に機械を使って本田に植え付けていきます。
私が体験した手植えより今は機械植えが主流となっているそうです。
作業場の裏の畑に行くと、草野さんと息子さんご夫婦がレタスの収穫を行っていました。
茨城のレタスも有名ですが、熊本のレタスもみずみずしくてとても美味しそうです。
畳の需要の減少でイ草の栽培量が減り、それを補う形でレタス、トマト、イチゴなどの露地野菜の生産をされる農家さんも多いそうです。
草野さんにお話を聞かせていただいた後、次にお伺いしたのは松川澄夫さんのお宅です。
松川さんの作られた畳表は問屋さんからもその品質が高く評価されています。
お伺いした時はご家族みんなでお忙しそうに作業をされてましたが、突然の訪問にも関わらず快く迎え入れてくださいました。
松川さんには刈り取ったイ草を畳表に製織していく工程を見学させていただきました。
長さもまばらな刈り取ったイ草を
機械に入れて長さごとに選別していきます。
左から右の束になるにつれて長いイ草です。
短いイ草は畳表として使う部分に根っこと穂先の黄色い所が入ってしまうために下級品になり、長さのあるイ草ほど真ん中の青い部分だけが使えるので上級品になります。
選別したイ草を機械に入れ水蒸気で加湿します。
この加湿の具合によって畳表の色調や表情が変わるためとても重要な工程です。
その日の温度や湿度によってイ草の声を聴き、加湿の塩梅を微妙に調整していきます。
加湿したイ草を今度は奥様が一本一本手作業で選別し、変色や傷のあるイ草が無いかチェックしていきます。
このような折れたイ草などは弾いていきます。
地道な細かい作業ですが、畳表の品質を支えるためには大切な作業です。
そしていよいよ選別したイ草を製織機で畳表にしていきます。
小屋の中で何台もの製織機が稼働して畳表を織っていく姿はなかなか迫力があります。
1台で作れる畳表には限りがあるため、早いときは朝の5時から稼働させるそうです。
折れたイ草などが入ると機械が止まってしまうため付きっきりでいなければなりません。
そしてついに松川さんの畳表が完成しました。
何度も完成品を見ている私も、ここまで手間暇かけて畳表を織りあげていく工程を見ていると仕上がった畳表がとても貴重な品に見えてきます。
この感動を茨城のお客様にもしっかりお伝えしなければと思いました。
見学後にご自宅の和室でお茶をいただきながらイ草作りのお話をゆっくり聞かせていただいていると、ふと日に焼けた畳の色がとても綺麗なことに気づきました。
すると松川さんに
「良い畳表は時間が経ち、日に焼けて黄色くなっても綺麗なんですよ。
私たちはこの色を飴色って呼んでいます。」
と教えていただきました。
たしかにムラも無く、べっこう飴のように光沢があって艶やかな色をしています。
人肌に近く、見ていて落ち着くようなとても暖かな色合いです。
極端な例ですが下の中国産畳表のように日焼けした時に出る黒い筋が一切ありません。
見比べてみると一目瞭然です。
大切に育てた国産の良い草だけを使っているのでこんな綺麗な色になるのですね。
「良い畳表と悪い畳表は最初が同じように綺麗に見えても、使えば使うほどその違いがわかってくるんです。」
畳表のプロである問屋さんがおっしゃっていた事の意味がこの時良く分かりました。
今回の研修で農家さんと直接お話しさせていただき、1枚の畳表ができるまでにこんなに沢山の手間暇がかけられ、一本一本のイ草にも生産者の皆さんの魂が込められているんだということが良くわかりました。
まだまだ勉強不足ですが、もっと現地に足を運び、農家さんのお話を聞いて、その想いをお客様にお伝えしていけるように精進していきたいと思います。
次は畳表を当店まで送ってくださる問屋さんを訪問し、農家さんが作った畳表がどのようにお店まで届くかをレポートしたいと思います。
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