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2回目の熊本い草研修⑤「八代市イ草農家さん巡り」
2日目の午後は、八代市のイ草農家さんを訪問していきます。
まず訪問したのが、綿田好孝さんです。
綿田さんは、八代のイ草農家さんでも大規模な施設と設備を整えていらっしゃいます。
刈り取って、乾燥させたイ草を畳表に織る作業をされていました。
織り機が大きな作業場の中で一斉に稼働する光景は壮観です。
年代物の古い機械がカタカタと稼働し、畳表が織り上げられていく姿は、なんだか男心をくすぐられ思わず見入ってしまいます。
畳表に織る前のイ草は、奥様が手作業でチェックしていました。
折れた草や、質の悪い草が無いかを目視でチェックしていきます。
地道で細かい作業に、「目と首が痛くちゃっうのよー!」と笑顔で仰ってました。
こちらは、織りあがった後の畳表のチェック。
綿田さん自らが畳表の仕上がりを確認して、産地表示の印鑑を押していきます。
当店に届く畳表は、こうした地道な品質管理を経て作られているんですね。
今回の八代イ草研修のムービーを作るためにインタビューをお願いしたところ、突然のお願いにも関わらず快く撮影させていただきました。
「熊本のイ草農家の現状を、お客様に届けて下さい」とおっしゃっていました。
畳屋の一人として、八代の生産者の想いを少しでもお伝えできたらと思います。
次は、イ草農家さんの事業組合「松品会」で事務局をされている瀬海秀人さんです。
元イ草生産者で、現在は生産者のサポートや取りまとめなどをされており、若手の農家さん達にとても慕われている兄貴分のような方でした。
瀬海さんに見せて頂いたのが、とても珍しい「無染土のイ草」です。
前回のブログでもご紹介した、刈り取ったイ草を泥の中に浸すイ草の泥染め。
泥のコーティングでイ草の耐久性を高め、変色を防ぐ伝統的な技法です。
しかし、染土がつくことにより、
・イ草に付着した泥の粉が畳表に残り、から拭きした際に付着することがある。
・泥に対し、アレルギーを持つ方には不向きな場合がある。
・泥の粉がカビの原因になる。
などのデメリットもあります。
そこで、近年の研究による乾燥技術の発展で実現されたのが、この泥染めをしないイ草を使った「無染土畳表」です。
泥染めをしないことにより、上記のようなデメリットを防ぐことができ、刈り取ったままのい草の艶がそのまま現わるので高級感のある仕上がりになります。
染土の無い畳表は草の顔が隠れず見えてしまいますので、田んぼの中でよく育った長くて綺麗な厳選されたイ草しか使われません。
泥染めを施したがイ草にがお化粧を施した畳表と言えるのに対し、
無染土畳表はイ草本来の素材を活かした「すっぴん美人な畳表」と言えるのです。
室町時代から始まった八代のイ草作りは、500年の歴史を経た現在においても、新たな技術を活かした挑戦が行われているのです。
瀬海さんにはこの後も研修に同行していただきき、昼夜問わずお世話になりました。
その熱いお話は、瀬海さんのイ草に対する真摯さと情熱を感じることができました。
最後に訪れたのは、「市松畳表」を専門に作っている佐伯壽さんです。
市松畳表は、畳の表面が市松柄の模様をしている特殊な畳表です。
イ草の「穂先の青さ」と「根元の白さ」を利用し、長い草と短く草を交互に編みます。
こうしてできた畳表は、市松柄のアクセントが効いた、オシャレな畳になるのです。
佐伯さんは八代でも珍しい、柄のより細かい市松目積表を専門で製作されています。
美しい市松模様が畳表にでるよう、厳選したイ草を選び、毎年数ミリずつ模様の形を変えて織られているそうです。
これにて、2日目のイ草生産者さん巡りは終了。
本当は研修を通じて、ここには書ききれないほどたくさんの方にお会いしました。
教えていただいた多くの学びは、お客様にしっかりお伝えしていきたいと思います。
最終日は、い草商品を製作している「指定障がい者支援施設くすのき園」を訪問します。
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